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【内閣府オープンイノベーションチャレンジ2021】【ヘルスケア分野】メロディ・インターナショナル× 島津製作所×京都府|STAEN注目のアクセラプログラム2021 No.1


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Kotaro Morimoto

慶應義塾大学法学部在学中。学生のための政策立案コンテストを主催する学生団体GEILでの活動、国立台湾大学への留学を経て、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のLEAPOVERチームでインターン中。スタートアップ関連の取り組みや制度について学んでいる。

近年、多様化・複雑化する社会課題を迅速に解決するため、国の省庁及び地方自治体において、行政サービスの向上や業務効率化に資する新技術・新サービスの導入に係るニーズが高まっています。

また、スタートアップ・中小企業においては、アイデアの実証や導入を省庁・自治体に提案する機会がなかなかありません。

こうした状況を踏まえ、社会課題解決や行政サービスを向上するための新技術・新サービスを持つスタートアップ・中小企業を積極的に発掘し、省庁・自治体と連携する機会を創出することを目的として実施されるのが「内閣府オープンイノベーションチャレンジ2021※1」です。

今回は、京都府の課題である「産後うつの発症・重症化を防止するための産後うつ兆候検知技術」を解決する技術の実証実験について、当プログラムのヘルスケア分野にて採用されたメロディ・インターナショナル株式会社・株式会社島津製作所と京都府にインタビューを行いました。※2

※1 内閣府オープンイノベーションチャレンジ(以下OIC)のプログラム詳細についてはこちらの記事を参照ください。
※2 当メディアの主旨に鑑み、インタビューはスタートアップのメロディ社を中心に行っております。

【起業経緯】遠隔医療プラットフォームを提供 産科医不足に一手

―CEOの尾形さんは医療分野で2社起業しておられます。医療分野での起業を検討した理由を教えてください。

(メロディ 尾形氏)
医療分野との出会いは2000年です。四国4県電子カルテネットワーク連携プロジェクト※3に参画しました。その中でも周産期電子カルテは、産婦人科の医師から「秘書みたいな役割を担ってくれている」と言っていただいたことで、このサービスが役に立つと確信し、2002年に周産期電子カルテ事業で1社目を創業しました。

1社目を経営する中で出会った一部の都市では出産の出来る施設が消滅し、遠隔医療の必要性を認識しました。また遠隔医療においても顔色の観察などでは診断に限界があることがわかってきました。こうした状況の中で、生体データを取り扱う遠隔医療を実現したいという思いが強くなり、モバイル胎児モニターの開発に着手しました。開発にあたり香川大学の原量宏教授の力を借りながら、生体データに基づく遠隔医療デバイス・プラットフォームの製品化に向けて2015年に2社目となるメロディ・インターナショナル株式会社を創業しました。

有人離島や医療過疎地の多い地元瀬戸内地方での産科医療の問題と世界の発展途上国での課題は共通しており、それらの地域への解決策としてデジタルヘルスを活用した遠隔医療の普及に努めています。

※3 1999年開始の通商産業省(現経済産業省)管轄事業。「当時のカルテは紙ベースで作成されており連携時に読解できないといった課題があった」と尾形氏は言う。

 

―産科医療分野での最大の課題は「産科医不足」であり、その課題をダイレクトに解決するサービスになっているというご認識でしょうか。

(メロディ 尾形氏)
おっしゃる通りです。2006年以降、産科医が大幅に減少し、病院の集約化でその数も20%以上減少しています。※4当社のある香川県でも近年、東部の全地域をカバーする病院が分娩を取りやめるという事態がありました。

そもそも産婦人科は労働環境という面では診療科の中でワーストです。背景には出産が24時間いつでも起こり得ることや、訴訟リスクが高いことがあります。

多忙でリスクの高い産科医の環境、その環境が起因し起こり得る妊婦の不利益を、当社の生体データに基づく遠隔医療デバイス/プラットフォームで解決します。

※4 厚生労働省『令和元年医療施設(動態)調査・病院報告の概況』によると、産婦人科+産科の施設数は2006年で1,576棟、2019年で1,300棟と大幅な減少傾向にある。

【サービス】胎児の心拍計測に基づく遠隔医療 産後うつ領域に拡大

―今回の実証実験で利用する貴社サービスについて教えてください。

(メロディ 尾形氏)
モバイル胎児モニター「分娩監視装置iCTG」と周産期遠隔医療プラットフォーム「Melodyi」※5です。胎児の心拍計測により自律神経の推移から健康状態を見守る心拍計測のアルゴリズムをコアコンピタンスとしており、その技術の産後うつ早期スクリーニングへの応用として本事業に応募しました。当サービスは「胎児の心拍は病院で計測する」という常識を刷新し、従来のように医師や妊婦が病院で心拍を計測する必要のない世界を実現したのです。

※5 当サービスの詳細はメロディ社HPを参照ください。

―貴社は大学発スタートアップとも評されますが、大学との連携について教えてください。

(メロディ 尾形氏)
モバイル胎児モニターの事業は、香川大学の技術と長年の研究成果を元に開発され、その海外展開は香川大学と海外の姉妹大学で進めてきました。そして、今回の実証においては、京都大学病院と熊本大学病院に現場でうつに関する装置やソフトウェア・アプリを利用してもらい、「本当にうつが診断できるか」「うつの度合いが心電データから識別できるか」などエビデンスを検証して頂く役割をお願いしました。

貴社サービスの利用期間について教えてください。

(メロディ 尾形氏)
iCTGは妊娠28週から出産までを対象としています。そのため現状は出産前までの妊婦のサポートを対象にしていますが、その範囲を出産後まで拡大したいと考えていました。そのような状況下で、今回京都府が課題として挙げられていた「産後うつ」に着目しました。

 

【実証実験】産後うつの発症・重症化を防止するための産後うつ兆候検知技術

今回のプロジェクト組成までの流れに簡単に触れておく。内閣府のOIC事業において京都府が課題解決パートナーを募集。そこにメロディ社と島津製作所がチームで参加を表明した。ここからはメロディ社・島津製作所・京都府それぞれの担当者の思いを紹介する。

―オープンイノベーションチャレンジ応募までの経緯を教えてください。

(メロディ 尾形氏)
新型コロナウイルスの蔓延に伴い、約1年前から産婦人科でうつ患者が大幅に増加している事実を知りました。そこで産後うつの解析をしたいと考えるようになり、うつの診断ができるデバイスを探していた中で、島津製作所の心電デバイス※6が非常に高精度であり、活用したいと考え共同開発を持ちかけました。また偶然にも島津製作所の拠点がある京都府がオープンイノベーションチャレンジにおいて産後うつの課題を抱えていることを知り、運命的な何かを感じ応募を決意しました。

(島津製作所 服部氏)
当社はスタートアップとの連携を強化しており、今回のプロジェクトの参画もその一環です。高スピードで事業を回されているメロディ社とパートナーとなることは、当社のビジネスが加速するだけでなく、、社内の開発チームにとっても良い刺激となっております。

また内閣府が主催する事業で成果を出すことにより、スタートアップとの実証成功例を社内外に広報し、さらなるスタートアップ連携を進めたいという背景もございます。

(京都府 健康福祉部こども・青少年総合対策室 足立氏)
2016年の母子保健法の改正(2017年4月1日施行)を受けて、厚生労働省から「子育て世代包括支援センター」を市町村に設置する方針が出されたところ、京都府は法の施行に先立ち2016年8月に「きょうと子育てピアサポートセンター」を開設し、府内の市町村と連携をとり子育て戦略に関する支援を行い、子育て世代包括支援センターの設置を支援してきました。

現場の声を集める中で新型コロナの影響により「産後うつに罹患する方が増えている」との報告を受け、府として本腰を入れて課題に取り組む必要性を感じ、令和3年度は新規事業として「妊産婦包括支援事業」を実施しております。そのような状況の中、メロディ社と島津製作所チームの協業を知り、京都府の課題を解決すべく協業をお願いしました。

※6 心電デバイスは、島津製作所で開発中の機器HuME(Human Metrics Explorer)™の一部です(プレスリリース参照)。

図はオープンイノベーションチャレンジのプロジェクトフロー、2月下旬のDEMOデイは間もなくだ
オープンイノベーションチャレンジ事務局提供

オープンイノベーションチャレンジで行う実証実験の概要を教えてください。

(メロディ CIO 二ノ宮氏)
妊婦健診や産後健診のメンタルヘルスケアにおいて、心電計測及び付加情報を基に妊産婦うつのリスク判定を行うための、デバイスやサービスの事前調査を行います。産婦や自治体、医療機関にヒアリングすることで、より現実的で運用可能な方法を策定します。

まずデモデイ(2022年2月下旬)までの目標は実証実験が始まるまでのプロトコルの確立をするためにニーズを再測定し、商品サービス設計のスタート地点に立つことです。デモデイに向け産科医/精神科医・自治体関係者を対象に座談会を開催、産学官連携における役割を再度確認しました。

デモデイ以降の予定ですが、初年度は「土台作り」に徹します。具体的には妊婦や母親に対し、ニーズ調査を行います。また大学とは共同研究計画の合意直前であり、今後研究を進めていきます。そして約2年間かけて実証実験を行い、データを採取する予定です。その後、妊婦が使うアプリや他の民間サービスとの連携と言ったUI面の整備を行い2024年でのサービスローンチを想定しています。

オープンイノベーションチャレンジを通じて達成したい目標を教えてください。

(メロディ 二ノ宮氏)
バイタルデータなどの客観的なデータから産後うつ予備軍などの対象者を抽出して、早期スクリーニングを実施出来るデバイスや、アルゴリズムを開発します。それにより、問題が深刻化する前にサービスや医療などで介入できるサービスを目指します。現時点では妊婦向け中心のサービスですが、この事業により妊産婦の安心・安全な出産を見守るサービスを産後まで拡げたいと考えています。


2022年2月に開催された座談会の様子。産科医・精神科医と自治体を対象に活発な議論が行われた
オープンイノベーションチャレンジ事務局提供

オープンイノベーションチャレンジに参加された感想を教えてください。

(メロディ 尾形氏)
オープンイノベーションチャレンジに参加するまで、自治体や医療機関とこれほど密に話す機会がありませんでした。どこか一人で勝手に考えていた部分もあったかと思いますが、今回のチーム組成で様々な観点から課題発見ができ、共に考えていくことができて良かったと感じています。

(島津製作所 服部氏)
オープンイノベーションチャレンジは自治体・スタートアップ・大企業が連携する点で珍しい取組みであると感じています。多様なメンバーが集まっていることに加え、コロナ禍によるオンラインでのコミュニケーションが中心となり、プロジェクトの進行で難しく感じることもありました。しかし、産後うつの社会課題解決という同じ目標に向かって、何とかいいチームになってきました。まずは、デモデイに向けて最後まで全力で走り抜きます。

(京都府)
妊婦向けサービスで実績のあるメロディ社、日本を代表する精密機器メーカーの島津製作所、さらには京都大学・熊本大学にもご協力いただき、話し合いを重ねていく中で、本府の目指す「子育て環境日本一」の実現に向けて大きな可能性を感じております。オープンイノベーションチャレンジ終了後も引き続き連携していければと考えています。

【企業概要】メロディ・インターナショナル株式会社

【 代 表 者 】 CEO 尾形優子(Yuko Ogata)

【 所 在 地 】 香川県高松市林町2217-44ネクスト香川304

【  Vision   】 「世界中のお母さんに、安心・安全な出産を!」

【事業概要】 遠隔医療サービスにかかるプラットフォームと医療機器の製造、開発および販売

【   U R L   】  https://melody.international/

 

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