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自動野菜収穫ロボットで人材不足を解消【inaho株式会社】|STAEN #注目のスタートアップ2021


ライター名

この記事を書いた人

Kotaro Morimoto

慶應義塾大学法学部在学中。学生のための政策立案コンテストを主催する学生団体GEILでの活動、国立台湾大学への留学を経て、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のLEAPOVERチームでインターン中。スタートアップ関連の取り組みや制度について学んでいる。

inaho株式会社

【 代 表 者 】 代表取締役      菱木豊、大山宗哉

【 所 在 地 】 神奈川県鎌倉市御成町11−2 ヤノヤビル 2F

【  Vision  】 農業をサステナブルに

【事業概要】 自動野菜収穫ロボットを中心とした生産者向けサービスのご提供

【 URL 】 https://inaho.co/

 

アメリカ発農業用ロボットの開発企業を知り、農業の世界での起業を決意

調理師専門学校、不動産コンサルタントと異色の経歴をもつ菱木氏。AIが十分に活用されていない分野での起業を考え、毎日3件新規事業を検討してもこれぞというものは見つからず、1年以上模索し続けた。偶然目にしたレタスを自動で間引くロボットを開発するアメリカのスタートアップ企業に魅了され、日本の農家の方々へのヒアリングを重ねるうちに、日本における農業の構造的な課題を知り、農業分野におけるAI活用に大きな可能性を感じた。

 

解決すべき社会課題~農業分野における人材不足の解消

では、農業の構造的な課題とは何か。菱木氏は「人材不足」に目を付けた。これには大きく2つの側面がある。1つは「高齢化」だ。2020年に農林水産省が発表した基幹的農業従事者の平均年齢は67.8歳。2005年の同データと比較すると平均年齢は3.6歳も上昇しており、この傾向は今後も続くとみられている。このような高齢化により農業従事者は2030年までに約75万人に減少すると予想されている。もう1つは「スタッフの通年採用が難しい」という点だ。農業は一般的に季節によって必要な労働力が大きく異なる。そのため通年でスタッフを雇用することが難しい。さらに農業自体が薄利な事業であり、労働期間の制限があっても働きたいと思えるような高い水準の賃金は支払えない。不安定な労働環境に、不十分な賃金という労働者が集まらない構造になっている。

RaaSモデルを採用した自動野菜収穫ロボット

農作業全体のうち、半分以上を占めるのが「収穫」だ。収穫のほぼすべてが手作業で行われており、機械化の余地があることを知った菱木氏は、収穫にフォーカスしたサービスを考えた。こうした中で開発されたinahoの自動野菜収穫ロボットは、収穫ルートを自動で辿り収穫する機能を持つ。人力を必要とせず、基本的にロボットのみで収穫を完結させることができる。ロボットは人が休んでいる夜間でも動かせるため、作業効率は格段に上昇する。

画期的な点はこれだけではない。それは、「RaaSモデル」を用いて農家にサービスを提供している点だ。RaaSとは、「Robot as a Service」の略で、農家がロボット本体を購入するのではなく、借り受ける形で利用し、その利用実績に応じて料金が発生するモデルだ。高額になりやすい最新ロボットをイニシャルコストを抑えて利用できる。ほかにもRaaSモデルそのものの強みとして、随時アップデートされたロボットを利用できるという点がある。通常、農機を購入すると、その高額さゆえに頻繁な買い替えが難しく、長期にわたる利用が前提となる。老朽化した農機をだましだまし使う農家も珍しくない。その点、inahoのサービスでは、スタッフが定期的にメンテナンスしている最新型のロボットを使うことができる。

 

inahoの課題と挑戦~エリア拡大と対象作物の種類の拡大

inahoは佐賀市周辺を現在の主拠点としている。inahoが主に狙う選択収穫[1]作物であるアスパラガスの有名な生産地だからだ。また、2020年には農業技術分野において先進的なオランダにも拠点を設立した。inahoは次のステップとして収穫に適した圃場環境の提案や収集したデータを活用した生産者向けコンサルティング事業の展開、アスパラガス以外の作物への対応も進めている。オランダではハイテク温室で稼働するミニトマトの収穫ロボットを提供する。また2021年4月、inahoは選択農業(AIで判断して収穫、除草、防除等を行う農作業)に関する基本特許を取得した。

今後は、既存の農機具メーカーへのライセンスの開放や技術提供を通じて、露地栽培の現場におけるトラクターと組み合わせたピンポイント除草や、ピンポイント防除、位置情報と生育情報を組み合わせた生育予測サービスの提供を行っていくために、国内外のパートナーを探している。一見莫大な時間が必要にも思われるこれらの計画であるが、1年間で収穫率を飛躍的に向上させたinahoの開発チームであれば、そう遠くない将来に上記サービスがローンチされるのではないかと期待できる。

 

[1] 選択収穫:一括収穫(コメなど)と反対の概念。サイズや色に応じて収穫するか否か判断すること。

 

inahoの最終目標~農業をサステナブルな産業

inahoは中期的な目標として「農業の生産性向上を請け負うグローバルトップブランドになること」を掲げる。三現主義で開発されたテクノロジーやノウハウを元に事業を拡大し、データを集積・活用、農業分野におけるサプライチェーン全体の効率化を目指して事業を展開する。最終的に目指すのは、「農業をサステナブルな産業にする」ことである。そのために、農家の生産性を飛躍的に向上させるサービスの提供を行っていく。

 

 

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