
コネクテッド・インダストリーズ株式会社
【代 表 者】 代表取締役社長 園田正樹
【所 在 地】 東京都中央区築地6-7-11
【 Vision 】 安心して産み育てられる社会を作る
【事業概要】 病児・病後児保育室の検索/予約サービス
【 URL 】 https://ci-inc.co.jp/
現役産婦人科医として感じた課題を解決するために起業を決意
子どもが大好きで産婦人科医になったという園田氏。大学院で公衆衛生学を学び、虐待のハイリスク妊婦について研究していくうちに、子どもを安心して産み育てられる環境を整えることの重要性を知る。働く女性に話を聞く中で、子どもの急病仕事の休みが重なったことで異動を指示され、やりがいも収入も減り結果として仕事を辞めてしまった方がいると知り、ショックを受けた。そこで出会ったのが病児・病後児保育室という存在だ。風邪などの入院するほどではないが、保育園を休まなければならない 子どもを一時的に預かる施設だが、あまり知られておらず使いづらいこともあって活用されていないという。これらの問題は、テクノロジーを活用して解決できるのではないか? そう考えた園田氏は、病児・病後児保育室の課題解決に取り組み始めた。
解決すべき課題~病児保育の認知度と利用率の改善
コネクテッド・インダストリーズ社が2019年に就労女性300人に向けて行った全国調査によると、病児保育の認知度は25%、利用経験のある母親の割合は12%と、保護者の多くが認知、利用していないのが現状だ。内閣府が行った調査では病児・病後児保育室の利用率は約30%と報告されている。2018 年の利用人数が69万人に対し、園田氏が行った研究では潜在ニーズはその20倍の1500万人もいるとされる。
そもそも存在が知られていないという点も課題だが、知っていれば活用するのかと言うとそうとも限ら ない。従来の病児・病後児保育室の利用にあたっては、空き状況が分からないため1件1件電話で確認し、その後も電話で予約を行い、提出書類は全て紙で持参しなければならず、利用者登録(事前登録)も必要となる。この手間が利用率を下げている要因の1つであり、園田氏はまずこうした従来型のアナログで使いにくく分かりにくい仕組みを刷新するために、システムの開発が必要であると考えた。
病児保育支援システム「あずかるこちゃん」の特徴~四方よしのビジネスモデル
こうして病児・病後児保育室の利用フローをシンプルにすることを目的に開発された「あずかるこちゃん」は、スマホで簡単に病児・病後児保育室の空き状況が確認でき、そのまま予約やキャンセルまで可能な機能を実装しており、保護者のみならず、病児・病後児保育室・自治体・保護者が勤める企業の4者にメリットを提供している。
①保護者のメリット
- 24時間スマホで病児・病後児保育室の予約が可能で、施設の営業時間内(自分の勤務時間と重複することが多い)に電話予約する必要がない。
- スマホ上の地図で病児・病後児保育室の場所や空き状況が一目で確認でき、自宅やオフィスからの距離や空き状況を確認しながら、予約ができ、利用当日に空いている施設に当たるまで、何件も電話をするといったストレス・手間から解放される。
- 結果、前日あるいは当日の早い段階で子どもを預ける病児・病後児保育室が手配でき、子どもの体調によって急に仕事を休んだり、介護を誰かにお願いしたりする必要がなくなる。また、家事業務に従事する保護者の一時的な休息に利用できる。
②病児・病後児保育室のメリット
- 電話対応に掛かる人的コストや、情報の聞き逃しリスクを軽減できる。
- 事務手続の負担が軽減される分、保育に集中できる。
- 認知度の拡大により利用者が増加し、収益面でプラスとなる。※1
※1 施設利用料は一日当たり2,000~2,500円が相場。現状は6割以上の施設が赤字経営。
③自治体のメリット
- 病児保育事業の認知度や利用率の向上により社会資源が有効に活用され、自律的に運用される状況を作り出せる。※2
※2 病児保育室の多くは、運営主体である市区町村が地域の医療機関、保育園に委託し、運営される。
④保護者が勤める企業のメリット
- 子どもを持つ従業員が突然欠勤・早退する頻度が減り業務配分の負荷が減る。
コネクテッド・インダストリーズ株式会社提供
さらなる認知度の向上で保護者の不安解消へ
「あずかるこちゃん」サービスの次のステップとして、病児・病後児保育室の認知度の向上に取り組んでいる。具体的には、導入施設や自治体の周知をフライヤー、ポスターなどで広報支援し、2021年10月には導入施設の詳細情報が掲載されたページをあずかるこちゃん内に持つ予定だ。今後は、病児・病後児保育室に関する正しい情報発信によって「子どもが一日中ベッドに寝かしつけられるのではないか」「他の病気がうつる心配はないのか」といった病児保育に対して抱く不安を緩和でき「子どもが病気の時は保護者が休むのは当然だ」という、保護者がもつプレッシャーの解消にもつながると園田氏は考えている。
また、自治体と連携した取り組みも重要になる。例えば、保育園の入園手続き時に、病児・病後児保育室の利用者登録も一緒に促すことができれば、これから子どもを持とうとする親に対しても認知度は格段に向上していくとみている。
自治体との更なる連携で日本全国にサービスを拡大
あずかるこちゃんは、2020年4月にサービスを開始し、2021年5月までに山形県寒河江市、山形市、大分県にも対象を拡大。また、神奈川県横須賀市と東京大学との産学官連携もスタートした。大分県との契約により、2021年10月から大分県内にあるすべての施設であずかるこちゃんが導入され、空き状況が見える化される。30施設ある県内の病児・病後児保育室のうち17施設では、あずかるこちゃんから利用登録や予約ができる予定だ。
同社では自治体導入の推進に向けて、各市区町村に対し補助金という観点から自治体の現状を踏まえた提案をしている。病児・病後児保育室は国と都道府県から補助金を得て自治体が運営している。厚生労働省の「病児対応型補助金方針」によると、運営事業費のうち、国と都道府県が1/3ずつ補助金を負担することが標準モデルとして定められているものの、実態は自治体ごとに様々だ。「定額制」と呼ばれる利用人数によらず一定額の補助を行う制度を導入している自治体では、利用率の低い病児・病後児保育室が多いと、国と都道府県からは標準モデル分のみ支給されることから、自治体の財政負担額が多くなってしまう。そこで同社は、「施設の利用人数がどの程度上昇すると、市区町村の負担額がどの程度減少するか」を自治体ごとに算出し、可能な限り自治体の負担を減少させるための提案を行っている。将来的には、あずかるこちゃんの情報管理と予約管理機能を基盤とし、医療的ケア児や産後ケア事業など、他の子育て支援事業への展開を検討している。
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