自治体

スタートアップを応援する熱い自治体【静岡県 浜松市】|STAEN #注目の自治体(4)


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Kotaro Morimoto

慶應義塾大学法学部在学中。学生のための政策立案コンテストを主催する学生団体GEILでの活動、国立台湾大学への留学を経て、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のLEAPOVERチームでインターン中。スタートアップ関連の取り組みや制度について学んでいる。

これまで毎週水曜日に配信されてきた「SCI-Japanウェビナー~スタートアップシリーズ~」のうち、第4水曜日を「Monthly Pitch“7minutes”~五方よしスタートアップが持続可能な日本をつくる!~」としてリニューアルしました。Monthly Pitch”7minutes”では、スタートアップを応援する熱い自治体職員の皆様に「STA-Mem47」として各回ご登壇頂きます。今回は静岡県/浜松市の中田希さんにインタビューを行いました。

 

地理・産業に恵まれ充実したスタートアップ支援の土壌が整っている都市「浜松市」

―まず浜松市の特徴を教えてください。

浜松市は首都圏と関西圏のほぼ中間に位置し都市部、平野部、沿岸部、中山間地域を有する国土縮図型の都市です。人口約80万人を擁する本市は2007年4月に政令指定都市へ移行。「市民協働で築く『未来へかがやく創造都市・浜松』」を都市の将来像に掲げ持続的に発展するまちづくりを目指しています。

本市およびその周辺地域は世界で活躍する大企業であるスズキ、ヤマハ、ホンダ、浜松ホトニクスの創業の地でもあり製造業が盛んです。現在では輸送用機器器具や光・電子技術関連等の高度な技術が集積しています。また、第二次産業に従事する市民の割合も政令都市の中で一位(33. 5%、全国平均25%)です。

このように、首都圏と関西圏の中間に位置する地理的な利便性と、産業的な優位性、そして実証実験における利便性(国土縮図型都市であるため、過疎地や繁華街など様々なフィールドでの実証実験、全国展開できるようなテーマでの実証実験ができる環境)を有しており、スタートアップの成長にとって魅力的な環境があります。

近年は「浜松バレー構想」を掲げ、地域の高度なものづくり技術とスタートアップの革新的なアイデアによるイノベーションの創出に力を入れています。2020年には内閣府から世界で活躍するスタートアップを生み出すスタートアップ・エコシステムの拠点都市「グローバル拠点*」に選定されました。

―あらゆる環境での実証実験を市内で完結することができるのは大きな強みだと感じました。

 

*スタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市

https://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/ecosystem/index.html

 

「浜松バレー」の実現に向けた多角的な取り組みを実施

―先ほど「浜松バレー構想」について紹介いただきました。浜松市版シリコンバレーをつくるにはスタートアップの成長フェーズに合わせた様々なサポートが必要になると思うのですが、市としてどのような形で支援されているのでしょうか。

当市では現在、スタートアップの創出・誘致から資金・情報の提供を通じた成長支援、市内企業とのマッチング等や実証環境の提供などあらゆるステージのスタートアップのニーズに対応するべく多くの関連事業を行っています。ここでは代表的な事業を紹介します。

Next Innovator育成事業―スタートアップの創出

起業を目指す人材や、ビジネスの成長を目指すスタートアップ経営者、企業内で新事業展開を目指す人材を対象にビジネスプランを募集し、経験豊富なメンター陣によるメンタリングや様々な起業支援メニューを通じて、グローバルに活躍する次世代の事業家を育成します。

サテライトオフィス整備・運営事業―スタートアップの誘致

浜松市内でスタートアップをはじめとする企業が利用できるオフィス「はままつライアルオフィス」「舞坂サテライトオフィス」「天竜トライアルオフィス」を運営しています。はままつトライアルオフィスでは、ピッチ大会(Night PITCH)や勉強会、交流会を開催しています。

ファンドサポート事業―スタートアップの成長支援

ファンドサポート事業は、「浜松市内のスタートアップに首都圏のベンチャーキャピタル(以下VC)からの投資が進まない」という課題のもと、2019年に始まりました。市が認定したVCによる市内スタートアップへの投資に対し、市が協調して交付金を付与することで、VCが市内のスタートアップに投資しやすくし、市内スタートアップにとって資金調達手段を増やすことを目的に実施しています。交付金の上限は、健康・医療分野は7000万円、それ以外は5000万円です。*

実績としては、過去2年間で13社に対し交付しました。また、認定VCも、2019年度の制度開始から現時点では41社(2021年8月現在)まで増加しており、今後、地域企業の資金調達が促進されることを期待しています。

*健康・医療関連事業はIPOやEXITに至るまでに時間と経費が比較的必要な領域であると判断したため上限を7000万円に設定。

 

参考:浜松市HP「ファンドサポート事業認定VC一覧」(https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/85903/r3vc23599_marked.pdf)を元にMURC作成

その他

・ベンチャー経営塾(グロービス経営大学院大学との連携により経営戦略等の講義を実施)

・実証実験サポート事業

・はままつ起業家カフェ運営事業(創業希望者への総合窓口)

・首都圏ビジネス情報センター運営事業

スタートアップとの協業支援を通じて製造業を再興する

―あらゆる方面からスタートアップ支援を行っていますが何がその背景となっているのでしょうか。

前述のとおり、当市は製造業に強みを持ち製造品出荷額は過去には3兆円規模を誇っていました。しかし、リーマンショックの影響を受け市内製造業の受注量が低迷し製造品出荷額は3分の2の約2兆円にまで減少しました。現在もなおその減少分は回復していません。そこで、停滞している製造業の再興を図るため、市内企業のオープンイノベーション支援や中小企業の製造業が下請け構造から脱却し、企業独自の武器を持てるような技術開発を支援しています。

地域に新たな活力をもたらし、イノベーションの源となるスタートアップには大きな期待を持っており、多方面からスタートアップ支援を行っています。例えば、市内の製造業の技術と全国のスタートアップの革新的な技術やアイデアの融合によるイノベーションを狙いとして、昨年度から新たに「浜松アクセラレーター*」を開催しています。これにより市内企業とスタートアップとの協業のきっかけを作ることができました。しかし、中小企業の抱える問題はより深刻で、中小企業は自社独自でのイノベーションには限界があり、地域内外のスタートアップや大手企業、大学との協業が必要とされています。今後はスタートアップとの協業を促進する施策を企画・実行するなど、市内企業のオープンイノベーションを促進してまいります。

 

*浜松アクセラレーター:今年度はヤマハやローランドDGを始め、計6社の市内企業が協業先スタートアップを全国から募集している。

https://growth.creww.me/fe49d1fd-fa3a-11eb-b84b-5d836a0c612d.html

 

浜松市からスタートアップへの支援の輪を全国に広げていく

―最後に中田さんのスタートアップ支援への思いを教えてください。

私はVCへの外部出向を経験し、自治体としての強みとVCの持つ強みを客観的に知る機会を得ました。自治体は人事異動が多く、単年度予算であることからも、スタートアップ支援を行う上での長期的なネットワークの構築・維持が難しい側面がありますが、一方で、信用力の高さや法規制の緩和等、自治体独自の強みがあることを再認識しました。幸いにも今年度新たに創設されたスタートアップ推進課に配属が決まり、スタートアップ支援の本流部署で、自身のこれまでの経験を活かすことができます。スタートアップの支援は、役所の中でも自由に柔軟な発想で業務を行うことができ、私にとって魅力的な環境です。今後は、このような環境のもと、市役所内外での経験を活かし、より良いスタートアップ支援を行っていきたいと考えています。

また、「世の中を変えていきたい、良くしていきたい」と考えて創業する起業家の方々と自治体職員の思いは重なる部分が多いと思っています。浜松市は、スタートアップ支援を積極的に行うことができる環境ですが、スタートアップ支援は、浜松市だけでなく全国の自治体が注力していく必要があると考えています。浜松市が積極的に先進的な取り組みを行っていくことで、スタートアップ支援の輪が日本全国に広がり、より良い社会が実現できればと願っています。

 

編集後記

インタビューを通じて、スタートアップの事業スピード並みの速度でスタートアップ支援メニューが次々と立ち上がっていることを知り、「慎重に業務や企画を遂行する」という私自身が想像していた自治体像と大きく異なる浜松市の「とにかく始めてみる」というスタートアップ支援体制に驚きました。その最前線でスタートアップ支援に取り組まれている中田さんの「スタートアップと自治体には、日本を良くしたい、変えたいという共通の思いがある。」という言葉からは、スタートアップ支援に自分事として取り組み、スタートアップと共に良い日本にしていきたいという強い思いを感じました。

 

 

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