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スタートアップを応援する熱い自治体【愛媛県 西条市】|STAEN #注目の自治体(5)


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Kotaro Morimoto

慶應義塾大学法学部在学中。学生のための政策立案コンテストを主催する学生団体GEILでの活動、国立台湾大学への留学を経て、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社のLEAPOVERチームでインターン中。スタートアップ関連の取り組みや制度について学んでいる。

これまで毎週水曜日に配信されてきた「SCI-Japanウェビナー~スタートアップシリーズ~」のうち、第4水曜日を「Monthly Pitch“7minutes”~五方よしスタートアップが持続可能な日本をつくる!~」としてリニューアルしました。Monthly Pitch”7minutes”では、スタートアップを応援する熱い自治体職員の皆様に「STA-Mem47」として各回ご登壇頂きます。
今回は愛媛県/西条市の曽我部智弥さん、戸田和宏さんにインタビューを行いました。

 

住みたい田舎ランキング2021年度全部門1位

―まず西条市の特徴を教えてください。

西条市は、愛媛県東部の道前平野に位置する人口約11万人の地方都市であり、北は瀬戸内海に面し、南部には西日本最高峰の石鎚山(海抜1,982m)がそびえ立ちます。海抜ゼロメートルの海岸部から標高1,982mの石鎚山山頂までわずか約20kmしかなく、西日本一の標高差を有しています。また、石鎚山系及び高繩山系から湧き出る地下水は、市民の生活の一部として溶け込んでおり、水資源に恵まれた都市であると言えます。

産業に関しては、1964年、新産業都市建設促進法に基づく「東予新産業都市」の開発拠点に選定されたことを機に、四国屈指の産業都市として発展してきました。主な業種としては鉄鋼、造船、非鉄金属、電気機械といった重厚長大産業や、豊かな水資源を利用した飲料工場などが立地しています。具体的には、四国最大規模の臨海工業団地には住友金属鉱山やアサヒビールなど多くの大手企業の工場が立地しているほか、大手造船企業の関連企業も多数集積しており、製造品出荷額7,947億(2020年)は今治市、新居浜市に次ぐ、四国第3位の規模を誇ります。

人口は1985年から減少を続けており、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2045年には、2021年比約30,000人減の78,307人まで落ち込むと予測されています。2045年までの30年間で特に0~64歳人口は約4割の大幅な減少が見込まれます。同時に世帯数の減少も進行していることから、近年では、空き家の問題が深刻化しています。また、65歳以下、特に若年層の減少は、就職に伴う都市部への流出が主因であるため、若年層の雇用の受け皿として新産業の創出が欠かせないと考えています。

 

移住政策×自治体SDGsモデル事業で人口減少に歯止め

―多くの自治体で問題として取り上げられる人口減少ですが、西条市ではどのような取り組みを行うことで対応しているのでしょうか。

移住政策とSDGs未来都市事業の2つの取り組みに注力しています。

移住施策については、移住推進課が主導で当市内の空き家を購入・賃借できる「空き家バンク事業」*や、移住の魅力を伝えるポータルサイト「LOVE SAIJO」*の運営を行い、若者層や事業者の流入を狙っています。結果、株式会社宝島社が公表する2021年版住みたい田舎ベストランキングにおいて、当市は、総合・若者・子育て・シニアの全部門で全国1位を獲得*しています。

さらに、中長期的に持続可能なまちづくりのため、当市としても持続可能な開発目標(SDGs)の達成が重要との認識の下、各種取組を進めています。一例として2021年5月、内閣府から、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する自治体として「SDGs未来都市」(2021年度採用31自治体)に選ばれました。また、その中で特に先導的な取組を「自治体SDGsモデル事業」(2021年度採用10事業)として選定いただきました。当事業の計画の4つの柱の1つに「産業イノベーション機能の強化」を掲げており、市の強みである重厚長大産業の一層の競争力強化と、新産業の創出を行っていきます。特に後者については、今後スタートアップとの協力が欠かせないと考えています。

 

*空き家バンク事業(西条市HP) https://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/ijyusuishin/akiya-bank.html

*LOVE SAIJO(西条市運営HP) https://www.lovesaijo.com/

*「2021年版住みたい田舎ベストランキング4冠受賞」に関するリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000072141.html

 

ローカルベンチャー誘致・育成や小規模SIBを実施

―人口減少問題の解決を図るべく、他の自治体はスタートアップとの協業により雇用の創出や技術のアップデートを狙っているという話をよく聞きます。西条市における現状のスタートアップの位置づけと取り組みを教えてください。

2017年、地域資源の有効活用や地域課題の解決する起業家を誘致・育成するべく「地域おこし協力隊制度(ローカルベンチャー誘致・育成事業)」を創設したほか、2018年から、地域の資金循環の仕組み「ローカルファンド」の構築を目指して西条市版SIB(Social Impact Bond)を実施しています。

後者は、社会的投資に対し成果連動型で報酬を分配する仕組みと補助金を組み合わせた新しい制度です。プロジェクトにあらかじめ成果目標を設定し、応援してくださる市民の出資によりプロジェクトを実施し、プロジェクト終了時、成果目標を達成していれば当市が交付金を中間支援組織に支払い、出資者には出資元本を償還します。併せて各事業者から出資者へ出資特典が贈呈されます。「SDGs達成に資するあらゆるチャレンジ」を対象にしており、2018年からの3年間で累計7つのプロジェクト、計450万円の出資が市民から集まっています。一方で、当市が扱ったSIBの事例は、所謂「スモールビジネス」が中心です。本来は、全国的なスケールが期待できる「スタートアップ」と連携した案件も取り上げたいのですが、当市のような10万人規模の都市では専門部署の設置が難しく、スタートアップと付き合うための知見が不足しているのが現状です。*

出所:「~地域に挑戦を生むあたらしい“応援”のかたち~西条市版SIB」より抜粋 https://www.city.saijo.ehime.jp/uploaded/attachment/48330.pdf

*「西条ジビエスタートアッププロジェクト」(2020年度)では、ジビエのイメージアップ・ジビエソーセージの開発を目的に、「西条市産ジビエを食べた人100名以上からアンケートを取る」「豊かな里山づくりを目指す団体との共同によるイベントを開催し、30名以上の参加と協働パートナーのリストを作成する」といった数値目標を設定し、成果目標を達成。出資金50万円は市民(出資者)に返還された。

*「内閣府 PFS(SIB)事業事例集」https://www8.cao.go.jp/pfs/jirei.html

 

スタートアップ誘致・連携へ向け疾走

―お二方はスタートアップ支援の専担者ではないにもかかわらず、Monthly Pitch 7minutes*においてSTA-Mem47*としてご参画くださり、積極的にスタートアップとの接触を図ってくださっています。他自治体のスタートアップ支援の取り組みや多数のスタートアップを見てきた中で、今後西条市で実現してみたいスタートアップ支援の取り組みがあれば教えてください。

現状は、前述の地域おこし協力隊制度やSIB事業など「起業型の地域おこし」に注力しています。一方で、その対象はスモールビジネスが中心で、急成長を遂げるようなスタートアップの誘致・支援の実績はまだまだ少なく、同時に様々な課題も感じています。

まず、誘致にあたって、地方の自治体ではスタートアップと出会う機会がなかなか得られないという悩みがあります。この点、三菱UFJリサーチ&コンサルティングさんが主催するアクセラレータプログラム「LEAPOVER」*やMonthly Pitch「7minutes」の存在はありがたいです。今後も、イベント参加を通じて魅力的なスタートアップとの連携を模索していきます。

また、支援について、実証実験環境の提供が重要と感じていますが、当市の場合、市内に本社を有する企業が少なく、民間企業との実証実験の機会を提供することが難しいです。こうした状況下で、現在「スタートアップにとって西条市の付加価値はどこにあるのか」という観点で、市のアセットを洗い出し始めています。例えば、当市はICT教育分野において、WEB会議システムと大型スクリーンで学校間の教室を繋ぎ合同授業を行う「バーチャルクラスルーム」の運営(2018日本ICT教育アワード受賞)など、ICT教育の形を先進的に模索してきたカルチャー・実績があります。ICT教育の充実は、子育て世代にとっての魅力の1つであると同時に、市として教育系スタートアップに対し実証実験のフィールドを提供することができる環境にもなりえると考えています。

当市の総合計画が2年後に改定される予定です。ここに、スタートアップ誘致・支援に関する施策を何らかの形で計画に盛り込んでいきたいと考えており、準備を引き続き進めてまいります。

 

*Monthly Pitch「7minutes」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社・一般社団法人スマートシティ・インスティテュート共催):毎月最終水曜日に開催されるピッチイベント。スタートアップと自治体の協業機会を提供している。

https://www.digitalsociety.murc.jp/leapover/Monthly_Pitch/7.minutes

*STA-Mem47:Monthly Pitch「7minutes」の参加自治体を指す。

*LEAP OVER(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社主催):持続可能な地域社会をビジネスで実現するために、パートナー企業と協力自治体の協力を得ながら、IoT・AI・Roboticsといった先端技術を有するスタートアップの成長にコミットする約4か月間のPoC型アクセラレータプログラム。

https://www.digitalsociety.murc.jp/leapover/vcmsFolder_387/vcms_387.html

 

 

STAENから自治体様のイベント・コンテストの集客・管理が可能です。登録はこちら(問い合わせ内容には「STAEN登録」と記入)↓
https://reg18.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=nekf-lenite-0062cb197195022df92f4936d5cdb252

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https://www.digitalsociety.murc.jp/leapover/Monthly_Pitch/7.minutes

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編集後記

人口10万人規模の自治体が産業振興の枠を超えてスタートアップ支援に取り組むことの難しさや支援における課題を認識できたインタビューでした。また、インタビューを通じて西条市がSDGs関連やICT教育など多角的な分野で外部から高い評価を受けていることを知りました。それらの取組を応用し、スタートアップと組み合わせていくことで、スタートアップにとってより良い環境を提供できる自治体になるのではないかと感じました。